おかしいな。元就さんのはあんなに綺麗に折れたのに。
もう一度、ぐぐぐ、と矢を握る手に力をこめる。
番外編 誰の言葉 おまけ
「…くっ」
食いしばった歯の隙間から声が漏れる。ん、ぎぎぎぎぎぎ…!…ぷはっ、無理!
ちょ、これ、何でできてるんだ。曲がるだけで折れる気配がないんですけど。
「元就さん、これって何でできてるんですか」
「一般的には竹、だな」
「竹!竹ですか。じゃあ頑張ったら折れそうなのになあ。なんでだ」
「ただ単にの力不足ではないのか」
「言い返せないのが悔しいです」
だって。若いうちから筋肉はつけすぎたらいけないんですよ。
成長期前に筋肉つけると身長伸びないっていうじゃないですか。と言うと、
そう言う割には我とたいして変わらないではないか、と言われてぐさっとくる。痛いところをつくな。
「…今日から鍛錬します。腕の力つけます」
「まあ精精励むがよい」
それから毎日腕立てをして、ひと月後、ようやく私は矢を折ることに成功するのであった。
「やった、見てみて元就さん、折れた!」と喜んでいたら、
「たった一本で騒ぐな」と元就さんに怒られた。人生ってシビアだ。
09/03/01
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