変な奴だと思った。
ブラック家の名に恥じるようなことをするな、という小言は
それこそ耳が腐るほど聞いてきた。だからあいつもそうだと思ったんだ。





スターリーヘヴン:03 // an addition





いつものようにジェームズ達と授業中に馬鹿やった日。
その日の授業はレイブンクローとの合同授業で、勉強に命を捧げている半ば変態のような奴が多いから
悪戯を仕掛けると迷惑そうな目で見られることがほとんどだった。でも、あいつは違った。


「シリウスの名に恥じるようなことはするな、愚か者!」


何度か授業が一緒だったので見たことのある顔。レイブンクローのネクタイをしている。
ああ、どいつもこいつも、俺をそういう目で見るのか。ブラック家がなんだというのだ。
しかし、ふと、違和感を感じて眉を顰める。
こいつは今、『ブラック家』ではなく『シリウス』と言った。単なる言い間違いか?


「…んだよ、うるせぇな。ブラック家がなんだってんだ」
「貴様の耳は節穴か、ブラックなぞ普通の色名はどうでも良い」


普通の色名って、ちょ、おま。
様子を見守っていたグリフィンドールの奴らはあんぐりと口を開けている。
今までそんなことを俺に対して言った奴を見たことがないからだろう。勿論俺もない。
レイブンクローの奴らは、どこか呆れたような顔をしていた。ため息を吐いている奴もいる。
周りの様子などまったく意に介さない様子で、目の前のレイブンクロー生は続ける。


「いいか、Mr.ブラック。シリウスだ、大事なのはシリウスだ」
「大事って、何が」
「何が大事だと?これだから自覚の無い奴は!己がどれほど素晴らしい名を名乗っているか認識しろ!」
「はぁ?」
「シリウス、光り輝くもの、焼き焦がすもの。質量は太陽の2.1倍、半径は太陽の1.7倍。
 そして何より素晴らしいのは全天でもっとも明るい恒星だということだ。
 それなのに、それなのに貴様は下らぬ悪戯で授業妨害など!まったく、天の星が泣いている!
 いいかMr.ブラック。今からシリウスという星の素晴らしさについてみっちり講義してやる!覚悟しろ」
「え、いや、ちょ…」


誰か頼むからこいつを止めろ。
公衆の面前で自分の名についての素晴らしさを語られるのは居心地が悪すぎる。正直恥ずかしい。
しかし俺の心からの叫びは誰にも聞きとめられることはなく、
授業時間が終わるまで俺は公開羞恥プレイをさせられる羽目になった。
休み時間に散々爆笑していたジェームズを蹴飛ばしてやった。人事だと思いやがって!





09/08/05